noroiwokakeruTSU_TP_V
もう5年くらい前だろうか。 
俺は怪談話が好きな奴らと百物語をやった。
場所はあるアパート。        

メンバーのひとりが借りているそのアパートは全部で六世帯の大きさで、その部屋は2階の真ん中。両隣は空家だったので、少しくらい騒いでも平気だろうと集まったのである。         
メンバーは俺を含めて7人。 
午後10時を過ぎた頃から百物語は始まった。         
最初のうちこそ半ば面白半分に話を進めていったが、一話一話と怪談が語られているうちに、部屋には徐々に緊張感が高まっていった。         

話が30話を越えたとき、家鳴りがした。
よくあることだ。
気温の変化等で家が軋むことは珍しくない。
誰もがそう思ったのだろう。
ちょっとびっくりしたことは確かだが、そのまま話は進んでいった。         
怪談は、どこかで聞いたことがあるな、といったものも多かったが、さすがは怪談マニアが集まっただけあって、掛け値なしに背筋が寒くなるような逸品もあった。 
時間は刻々と過ぎて行き、時計の針も0時を回った。        

ろうそく百本を持ち込むのはちょっと無理があったので、一人一本づつ用意し、七話終るごとに一旦消したろうそくに再び火を灯していった。 
話はほんの1~2分で終ってしまうものから、10分近くの長さのものまでいろいろとあったが、この狂宴もそろそろ大詰めに差し掛かろうというとき、小さな齟齬が起きた。 

七本のろうそくが消えてたとき、ある者は「これでラスト二話だね」 といい、またある者は「まだ、九話残っている」と言ったのだ。         
カーテンの隙間から見える空はかすかに白みはじめていた。         
なんか白けた雰囲気になってしまった。
それでも、あと二話は話そうということになり、二本のろうそくに火が灯された。        

 一本のろうそくが消え、残り一本となった。         
最後の話は、昔、ある村で数人の幼子たちが遊んでいるとき、突然の山崩れに巻き込まれて子供たち全員が死亡。
その後、その村はダム湖に沈むこととなり、月日が経ったある日、子を亡くした年老いた親たちが湖を訪れたとき、水面を死んだ子供たちが歩いて渡った、という、恐いというより、物悲しい話であった。         
そして、ろうそくが消えた。 

その瞬間、俺は何も感じることはなかった。         
だが、何人かが一斉に顔をあげて周囲を見回す仕草をした。何か起こったのか?と俺は聞いてみた。 
ひとりが、空耳かもしれないが、声が聞こえたと言った。         
俺も、俺もだ、と、さらにふたりが口を揃えた。         
俺は、ふとした考えから、声が聞こえたと言う奴らに、一斉に何が聞こえたか言ってみな、と促した。
 ちいさく、せーの、という掛け声が掛かったあと、3人は声を揃えた。

「とおりゃんせ、とおりゃんせ・・・」

にほんブログ村

オカルト ブログランキングへ

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット